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栄養コラム「なでしこ通信」

料理は目で食べている?

「日本人は目で料理を食べる。 西洋人は鼻で料理を食べる。中国人は、舌で料理を味わう。」
こんなフレーズを聞いたことが、ありませんか?
料理の何に、重きをおいているのか、国によって様々であることを表しています。もちろん、どの国の料理も「美味しさ」の追求はもちろんのこと、さらに上乗せの「何」を充実させているのかを顕著に表した表現と言えます。

 

美味しさ とは??

美味しさとは、その人の生理状態・心理状態・知識や経験、お店の環境さえもその要素として、影響を受けるものです。よって、味そのものを示す言葉ではなく、五感すべてが満足し、その他の状況も満足した時に、「美味しい」と人は表現をします。そして、五感から得た情報を全て、脳に蓄積して、美味しいという記憶として残しています。ですから、1つの要因のみで決定できることでは決してありません。が、敢えて言うならば、日本料理は、視覚を特に大事にした料理ということです。
では、視覚は、どのように私達の美味しさに影響するのでしょうか?

 

日本料理の美しさ

日本料理の中でも、会席料理は、現代の芸術作品だ、と海外でも評価されています。目で楽しむために、器にも季節を表し、桜の季節には、桜の花びらや、秋にはもみじの葉が飾られたりします。お椀の蓋の裏側には、美しい絵があり、「まぁ!こんなところに!」と、食べる前から、驚きや心躍らせる工夫がたっぷりです。
実は日本料理は、フランス料理に大きな影響を与えています。「ヌーヴェル・キュイジーヌ」(=薄い味付けで、素材を大事にし、繊細に盛付け、量も減らし、器にも凝る)を発案した、ポール・ボキューズという方は、日本の吉兆など有名な会席料理を味わった際に、その盛付けなどに着想を受け、現在のフランス料理になったと言われています。彼のレストランは、この着想を得た頃からミシュランの3つ星を、40年間とり続けています。
また、寿司屋のにぎりには、セットの中に必ず入れるべき色というのが、5色あり、「白・赤・緑・黄・黒」だそうです。食欲をそそる色の他に、料理全体を引き締めるための「黒」も重要な要素とか。安い握りなら「いか、まぐろ、バラン、卵、イカの上に巻かれた海苔」といった感じでしょうか?高級握りなら「ひらめ、トロ、胡瓜の上にわさび、子持ち昆布、いくらの軍艦」あたりで、いかがでしょう?想像しただけで、お腹がすいてきませんか?これら、「色」も結局の所、目=視覚から入る情報として、我々の食欲をそそる要因となります。

 

美味しさの記憶と視覚

「目」つまり「視覚」に重きを置いている日本料理は、食べるための準備に、重要な情報を「脳」に与えているのです。目を閉じて食べた時に、あなたは正確にその食べ物を言い当てることが出来ますか?実は、視覚の情報がなければ、約8割の食べ物の情報が失われたのと同じことになります。(目を閉じて食べた「ゆでたレンコン」を「ジャガイモ」と答える子供も居ます。)
私達は、目で捉えた情報により、

食べ物を認識 → 過去の食べ物の情報検索 → 予測 → 受け入れ準備 → 各種体内にて、ホルモン分泌や消化酵素の準備など

のように身体全体が、視覚情報からスタートし、受け入れ体勢を調えていくのです。
「わぁ!美味しそう!」と皆さんが、感じるのは、以前に美味しかったという記憶に残っている情報検索と、今、目の前にある料理を比較し、その時の美味しさより上回るかを予測し、視覚によって得た美しさにより、「きっと美味しいはず!」と認知しているのです。
記憶には、大きく、短期記憶、長期記憶に分類されるようで、

短期記憶

大脳辺縁系の海馬で保存(1週間~10日程記憶され、必要なければ消去)

長期記憶

大脳新皮質味覚野 に記憶(味細胞からの情報で、感動がともなうと、長期保存される)


つまり、感動を伴った美味しい料理というものは、記憶に長く残るものとなるのです。

 

視覚で美味しく!

もちろん、見た目ばかりでは、いけません。感動を伴う素敵なお料理を出してくださるシェフにはかないませんが、毎日のお食事でも、全く同じ料理を作ったとしても、より美味しく感じてもらうために、日頃から、少しだけ気をつけてみてはいかがでしょうか?

  • お皿の中での、彩り(赤、黄、緑)
  • 盛付けるお皿は、毎日同じにしない(食器棚の奥にあるものを使ってみては?)
  • 盛付けは、立体感を出して。 (一度に盛らず、2~3回に分けて、なるべく高さを!白髪葱などを高く盛付けるのもいいかも)
  • てんこ盛りにならないよう、ゆったりした大きめのお皿に。
  • アボガド、オレンジなど、外皮を入れ物代わりに。

などなど、ちょっとした一手間かけて、楽しく、美味しく、お食事をする事で、身体への吸収力も変わってきます。「おいしいものは 体に良い」とは、生体の様々な感覚が刺激され、食べ物を迎える環境が整い摂取した栄養素が効率よく利用される生理的欲求が満たされると言うこと。
美味しく、身体に良いお食事を毎日楽しめるように、視覚を利用して下さい。

 

参考文献
臨床栄養、Vol.77No.4・1999
食と味覚、阿部啓子 他
おいしく見せる盛りつけの基本、 宮澤 奈々
調理師科・・・川上 佐知子